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2019/10/24 up

InterPride 年次総会

InterPrideの年次総会に参加するため10月16日から20日まで、アテネに行って参りました!バックパッカー時代に行き逃していたので初ギリシャ!

InterPride (https://www.interpride.org)とは1982年にボストンで発足し、世界中のプライド関係者を結びつけエンパワメントすることを目的に活動している団体で、WorldPrideの運営母体でもあります。今回は65の地域から約430名が参加しており、今年加盟したTRPにとっては初の参加となりました。

年次総会ではWorldPrideの開催地を決めるための投票を行います。
厳密に言うと、WorldPrideの開催候補地、年次総会の開催候補地、ボードメンバーと年間予算、それぞれのプレゼンを見て、各団体が持つ一票をどこに投じるかを決める大事な会です。2021年WorldPride開催地は既にコペンハーゲンに決定しているので(2020年次総会はオスロ)、2023年の候補地への投票を行いました。また、それ以外の時間では世界中のパレードに関する情報共有セッションやワークショップなど、パーティも含め朝から晩までみっちりの三日間。以下は備忘録も兼ねた今回のメモ、久々長文です。

・会議は3日間ヒルトンアテネで開催。2020EuroPride開催予定のテッサロニキとアテネのプライドメンバーが中心になってホスト。スポンサーや各候補地のブースが置かれており、豊富なオリジナルグッズと共にそれぞれがPRを行なっていました。

・2023年のワールドプライド開催候補地は、シドニー/オーストラリア、モントリオール/カナダ、ヒューストン/アメリカの3ヵ所。それぞれ30分のプレゼンを見た感じでは、シドニーとモントリオールの一騎打ちかなという感触。
資金力も含め、いかに開催準備をしているかはもちろんのこと、安全性、アクセスのよさ、観光地としての魅力などなど、いかに自分たちが開催地としてふさわしいかをアピール。(規模は違うけど五輪招致みたいな感じですね。)政治家やスポンサーなどからのメッセージVTRも用意されており、モントリオールはトルドー首相やセリーヌ・ディオンからのメッセージまで!(すご!) 数百万人が参加するワールドプライドが決まればかなりの経済効果も見込まれますからね。日本視点で見ると全てが魅力的で羨ましくも感じました。

・2021年の年次総会の候補地はウィニペグ/カナダ、グアダラハラ/メキシコの2カ所。こちらも同じようにプレゼン。(ウィニペグって初めて聞いたな。。苦笑)今までほとんどアメリカとカナダで開催されているので個人的にはメキシコに頑張ってほしいところ。

・全体会で重要な話を共有するときは一人が英語で話した後に、ポルトガル語、スペイン語、フランス語とそれぞれの翻訳が続く。。。(ひとつの説明めちゃながっ!!)次回からは同時通訳入れてほしい、これまじで。

・全体会とは別に3日間で約40の分科会を開催。トピックは、もちろん全てパレードにまつわること。インタープライドの成り立ちから、資金調達、警察の巻き込み、SNSの効果的な使い方、アーティストのブッキングの仕方、物販、ボランティアのモチベーションなどなどなど盛りだくさん。
ワークショップの中には、コミュニティの分裂や運営メンバーの燃え尽き症候群・精神衛生の保ち方などに関するものまであり、、、苦笑
規模は違えど課題は世界共通なんですね。
同じ時間帯に4つの分科会が平行して行われるので全部には行けず残念でしたが、なるべく日本のプライドシーンに活かせるトピックをチョイスし参加しました。次回は日本からももう何人か一緒に参加していっぱい吸収したいと思います。

・野外イベントでの緊急時対応というセッション。TRPも近年参加者が急増しており、これは一番気をつけている点でもあります。どんな事例があるのか知りたくて参加してみたら、火災や事故に関してはさらっとだけ触れ、メインはテロと拳銃によるトラブルの話。なかなか日本ではイメージしづらいのですが(もちろん日本でもゼロとは言いません)、特に海外のプライドでテロを防ぐのは大きな課題。クイズ形式のワークショップも行い非常に興味深かったです。

・今年NYで行われたワールドプライドでの物販に関するセッション。イベントにおける物販収入は貴重な財源です。NYでは一体いくら売れたんだろう? 特に今年はストーンウォール50周年ということもあり、さぞ売れたんだろうなーと思って参加したら、実はそれほどまででもありませんでした。TRPでも毎年何をどのくらい販売するのかはいつも頭を悩ませているんですが、このデータもしっかり参考にさせていただきたいと思います。

・SNSの有効的な使い方はロンドンプライド運営チームが情報をシェア。SNSによる情報発信は鮮度が大事なのは言うまでもないのですが、それに対応する人材不足からいつも苦戦しているのが現状。ロンドンプライドはSNS運営サポートボランティアだけで50人もいるのだそう!(うらやましい!)でも今の時代はそれくらい力を入れてやる価値や必要性がありますよね。
どなたかSNS発信得意な方でTRPをサポートしたいという方がいらっしゃいましたら是非ご連絡をお願いしますmm

・フェスティバルに関するセッションはプライドのアーティストブッキングを専門に行うJJLAという会社がプレゼン。各地域のプライド予算やテーマに合わせ、一番効果的なアーティストの選定をどのように行うか。LGBTQへの理解や音楽ジャンルも踏まえて選定し、いかに効果的な波及を生むか、またアーティストの価値をさらに高めるといったことまで考えてどのように交渉&ブッキングをしていくのかなど。代々木公園は有料ライブができないため、チケット収入を見越した予算で交渉できる海外のプライドとはまた違う視点もありますが、これもとても大変勉強になりました。

・「よりよいパレード運営のためのよりよい財務」と題されたセッションではどのようにお金を集めるのかという話しだと思って参加したら、どうやって詐欺行為に巻き込まれずに運営するかという話しだったのはビックリ。団体ミッションとは合わないお金の流れ、利益相反の可能性、資金管理システムなど、また内部スタッフによる不正をどう防ぐかといった話しまで。
たしかに2年前にマイアミで開催されたWorld Out Gamesは資金トラブルで急遽キャンセルになったなぁとか、約9億円という今年のNYプライドの予算管理ってどうやってるんだろうなとか、議論が日本の数歩先を行っているようにも感じましたが、いずれ直面するかもしれない課題について考えるよい時間になりました。

・セッション以外にもトランス分科会、女性の分科会、有色人種の分科会などもありました。また地域会議も行われ、僕はアジア太平洋地域のミーティングに出たんですが、残念ながら人数は少なく。東アジアからの参加は韓国1人、香港3人、日本1人だけ。他にはインド、パキスタン、レバノンから数名ずつとオーストラリア。しかし、少ないながらもアジアンプライドをやろう!などと話は盛り上がり、各国の現状と課題を共有しました。やはり大きな共通課題は資金繰り。オーストラリア以外は、各国ともに行政からの資金サポートがほぼゼロ。InterPrideは規模の小さいプライドへのファンドや奨学金制度もあるのでそれも活用しつつ、どのようにして共に課題を解決していくか、引き続き情報とアイディアをシェアしながら進めたいと思います。

・今年から投票方法を電子投票に切替たらしいのですが、システムエラーで連絡が全団体に行き届いていなかったことが投票後にわかり大揉め。。。これを発端に各参加者の不満が爆発。ボードメンバーのセクシュアリティや人種のバランスが平等ではない、バイセクシュアルの分科会がなかった、トランスやノンバイナリーが排除されているなどなどなど、、、それぞれ抗議のスピーチがはじまり(しかも四ヶ国語。。。)、全体会が大紛糾。。。大汗
このままどうなることやらと思っていたのですが一旦休憩に入ったところで、どこからか愉快な音楽が。すると少しずつみんなが歌い出し踊り出し、最終的には会場全体でおおはしゃぎ。笑
そして何事もなかったかのように、次の議題へ。

すごっ!!

自然発生的なものだったのか、誰かのアイディアだったのかはわからなかったんですが、雰囲気を変えるために意図的に誰かが指示したものだとしたら、まじすげぇなーとちょっと感動しました。
言語も文化も違う世界各国からの強い思いをとりまとめるInterPrideの代表。それぞれの声にも真摯に向き合い、時に笑いをとりながら会を進めている姿に感動すると共に、その重責を想像しただけでハゲました。苦笑 今回はあまりお話する機会がなかったのですが、InterPride運営の裏側、一度じっくり話を聞いてみたくなりました。

・今回特に多く耳にしたのはジェンダー・ノンコンフォーミング (性自認が典型的な男らしさ、女らしさといったジェンダー規範に当てはまらない人を広く指す言葉)や、ノンバイナリー(自身のジェンダーを男性、女性のどちらかに限定しない人)という言葉です。いかにトランスジェンダー、ジェンダーノンコンフォーミング、ノンバイナリーを排除しない環境を作るかという議論がどのセッションでも頻繁に聞かれました。また、現在InterPrideでは女性自認と男性自認の二人が共同代表で、これではセクシュアリティバランスが悪いという抗議の声の結果、ノンバイナリー自認の代表を含む3人での共同代表性を検討することになりました。(これも投票で決めます。)
日本では同じような意味でXジェンダーという言葉が使われていますが、こちらでは一度も耳にすることはありませんでした。言葉自体がどうこうということではありませんが、日本でもXジェンダー自認をオープンにする人が増えている傾向があります。今まで男性自認二人が共同代表をやってきたTRPも今月から男性自認、女性自認の二人で共同代表になりました。すぐに三人代表制に変えるのは難しいかもですが、常にXの視点がこぼれ落ちないようにしっかりと意識していきたいと思いました。

・夜はなんといっても世界共通飲みにケーション! 僕の一番得意とするところなのですが、最近はやはりおじさん化しておりまして。苦笑
さすがに毎日朝までというわけにはいかず、時差マイナス6時間の日本とのオンラインミーティングもあったりしたので今回の飲みはそこそこにとどめさせていただきましたww 世界中の仲間と飲み交わし、部屋に戻って日本とミーティング、パートナーと子どもとテレビ電話でコミュニケーションをはかり、ちょこっと寝てからセッションに出る。なんて便利な時代なんでしょう。改めてインターネットありがたや。

・エクアドルからの参加者の方に「日本のプライド、最近盛り上がってるんでしょ!?」と声をかけられ、そんな遠いところにまで日本の話題が届いているのは嬉しかったです。7年間で40倍も規模が大きくなったプライドというのはなかなかないようで、アジア地域からの会議参加者が少ない分、貴重な情報だと日本の現状に興味を持ってもらえたことも嬉かったです。

・世界中で同じように活動する仲間の話に勇気をもらうと同時に悲しい現実も改めて実感しました。手首に傷がある方を見かけたのは一人や二人ではありませんでした。数百万人の規模を誇るプライドが開催されていたとしても、全てに理解があるわけではありません。LGBTQであるということで自己肯定感を持てない、自分を追い詰めてしまうetc. ストーンウォールから50年経った今現在でもこれが世界の現実。まだまだやることは山積みです。

・以前ネットからTRPに連絡をしたのに返事をもらえなかった、という苦情(?)もいただいちゃいましたmm TRPには国内だけでなく、世界中の方々から日々様々なメールが届きます。ただでさえ全てに返事をするのは大変なのですが、特に英文メールの対応は人材不足で対応しきれていないのも事実です。語学が堪能な方でTRPをサポートしたいという方がいらっしゃいましたら是非ご協力をお願いします!
・英語には相変わらず苦戦しましたが、とにかく全てがパレードにまつわる話しなので全然わからんということもなく。笑 改めて思ったのはこういう場では笑顔が大事ですね。言語も文化も違う相手とちゃんとコミュニケーションが取れているかというのは常にお互い不安があると思います。言葉がわからなかったりするとついつい顔が険しい表情になりがちなんですが、そんなときこそ笑顔。ニコっとするだけで全然印象が変わります。どんな状況でも心がけたいと思います。

・正直まったく遺跡に興味がない僕ですが、さすがにここまで来たのでパルテノン神殿とパナシナイコスタジアムだけは見てきました。大理石でできた客席は圧巻で、今から100年以上も前にここで第一回のオリンピックが開催されたのかーと、先人たちに思いを馳せながら束の間のフリータイムを満喫させていただきました♪

・トランジットで一泊したモスクワ。ロシアは2013年に同性愛宣伝禁止法が制定されLGBTQに対する迫害が非常に強いと聞いており、血まみれになっている当事者の姿をYoutubeで観て以来、恐ろしいイメージしかありませんでした。パスポートも未だFemale表記の僕は大丈夫なのだろうか、、、空港から緊張。しかし本気でビビりながら到着したモスクワの街はとても美しく、ご飯も美味しい。ドキドキしながら探し当てたゲイバーは清潔感ある大箱で、平日だったために混んでこそいなかったのですが週末は2フロアがパンパンになるほどの人気だとか。スタッフも気さくで、カウンターで隣り合わせたお兄さんに正直ちょっと怖かったんだと話すと「全然そんなことないよ!」と鼻で笑われました。苦笑 ゲイバーに来ている人だからかもしれないし、と思い帰りの飛行機でたまたま隣合わせたロシア人のおっちゃんと話した際にもLGBTQの話を振ってみたところ、こちらでも全然そんなことないよ!と。政府のプロパガンダのせいでロシアが怖い、ロシア人は皆アンチゲイみたいに思われるのは残念だ、と。結局話が盛り上がり、最後には「LGBTQの活動頑張ってね!応援してるよ!」とも。もちろんどれも一部にすぎずまだまだ大変な状況があるのは間違いないとは思いますが、ロシアに対するイメージ、今回でかなり変わりました。差別や偏見をなくそうと言っている自分が、知らない間にまた他の差別や偏見を行なっていないか?どこかから借りてきた言葉を自分の考えかのように語っていないか?
常に自分に問い続けたいと思います。やっぱり自分の目で見るの大事だな、と改めて。

そんなこんなで刺激多き一週間でした!今後にしっかりと活かしていきたいと思います!そして明日からは台湾に行ってきまーす!

(杉山より)